2010年11月アーカイブ

私はできれば君に、君にまで到達したい、
私の唯一の運命よ、そして私は走る、走る、そして私は
ころんでばかりいる、一歩ごとに、というのも、私たちの
はるか以前に、あまりにも早く、(・・・・・・)があっただろうから

とか、

私のIの上に点を打つことをもう君が私に許してくれなくなるときには、
空が私の頭上に落ちてくるだろう、そしてその落下には際限がなく、
私は別の方向に横たわることになるだろう

と、ジャック・デリダが「絵葉書Ⅰ」の中で書いている。
この転倒するイメージがしばしば登場するのだけれど、
ちょっと突然倒れる雰囲気が可笑しい。演劇的だ。と思った。
おそらく、物理的因果関係なしに、彼は転倒していて、
もちろん、その転倒も彼の頭の中で行われている転倒でしかない
のかもしれないけれど、その文章を読んでいる私には、
いきなり「転倒」したように思われ、その転倒がすごく、
印象的で、人は普通、何かにつまずいたり、足がもつれたり、
気を失ったり、何らかの大きなものに突然、ぶつかられたり、
そういうわけで転倒しているわけなのだけれど、
デリダは違う。
Iの上に点が打てなくなっただけで、立っていられなくなる。
突然、襲い掛かる「転倒」、そのダンスのようなイメージに
魅せられる。
思い返してみると、角ちゃんが考案した、何かの攻撃を
受け止めながら、後ろへ進んでいくダンスも、
転倒しそうになる場面があり、動きがゆったりとしながらも、
ダイナミックで魅力的だった。
転倒、底知れない魅力。
P1000421pt.JPG

タル・ベーラ監督の「倫敦から来た男」という映画を見た。
ジョルジュ・シムノン原作の推理小説が、ハンガリーの鬼才タル・ベーラにかかると、
すごい。
鑑賞者に強いる忍耐力に対して、敬意ある対価を、ちゃんと与えてくれる。
個人的に印象的なシーンがあって、
この映画の50%以上の会話が繰り広げられる宿屋のカフェで、
淡々とした登場人物の会話風景を長回しした後に、
ビリヤード台の周りで、アコーディオンを弾く人と、
その音に合わせて、おじさんが椅子をひょいひょい回していて、
その動きがまるで、天井から吊るされた椅子がくるくる回っているようで、
とてもファンタジックだった。

写真は、角ちゃんと行った多摩動物園。
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あいこぱ。フランス文学研究から大いなる逃亡後、あっちへふらふらこっちへふらふら。趣味は読書と映画鑑賞。 写真も撮ります。最近はジョギングも始めました。二十代後半にして、内なるアウトドア志向に転換。2009年無二の知己「角ちゃん」とKWネットワーク始動。 月刊川にて大好評更新中。連絡はmail:aikopa@gmail.comまでお願いいたします。

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