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遅すぎた春の訪れを、そろそろ素直に喜んでも良いんじゃないだろうか。
未来に横たわらないであろう不幸に気を揉むほど、
繊細な感覚はもう持ち合わせてないはずだし、初めて切り開かれていく世界に
すっと飛び込んでいく軽やかさを、私はずっと愛していた。
でも、まさか、切り開かれていくのではなく、以前からそこにあって、
私を待っていたその場所が、大いなる逃亡の末、戻って来た私をどう迎えるのか。
いや、厳密には逃亡ではなくて、
ちょっと長い気分転換に出ていただけだったのかもしれない。
長すぎて、色々なことをもう忘れてしまったけれど。
素直に軽々と飛び込むなら、できれば、日陰より日向が良い。
ヴェネチアでは、かすかに傾いた太陽が、赤いのと黒いのを照らしていた。

そして、来月、PHOTO!FUN!ZINE!というイベントに参加します!
5月18日(金)~20日(日)。場所は上十条のgallery & cafe FINDhttp://www.find.ecnet.jp/
お手製の小冊子、出品します。あと、額縁に入れた写真の展示もあります。
先月に行ったイタリアの写真と、その他もろもろで、
SFファンタジーっぽいことをしたいかな、と考え中。
ぜひ、遊びに来て下さい!!
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箱根は寒かった。
大涌谷からは噴煙がもくもくと出ていて、地獄のようだった。
特に誰も苦しんだり、悲しんだりしていない地獄。
帰って来て、写真を見返して、普通に写り込んでいる他の観光客が、
まるで地獄から平気な顔をして帰ってきたようになっていて、
ちょっと笑った。
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明確に何かつらいことがあったというわけではなかったのに、
ファジル・サイのピアノに身を委ねすぎたら、こちら側に帰って来れなくなっていた。
絲山秋子さんの小説も二冊、するすると読んでしまい、
愛すべき人々が私の目の前で、哲学を込めたチョコレートを食べている姿を
見られなかったことで、どこかしら居心地悪く、感じていた。
やさしさを与えた人から、直接帰ってくることはほとんどない。
いつもいつも、別の方からやって来る。
励ましてくれるのは、いつも別の人。そういうことなのか。
この一週間、明確につらかったわけではないのに、
ぎゅうぎゅうと私を圧迫していた感情が、少しずつほどけていったのは、
その別の人たちが励ましてくれたからなのだ。
宗左近の「炎える母」と、ぐるり屋さんの時計の話と、それから、
吉祥寺の文房具屋さんで、在庫のないクルトガ(シャープペン)を、
吉祥寺中のお店に問い合わせてくれた若い女性の店員さん。
少しずつ、私は日常の断片をコラージュにして、物語を紡いでいくための、断片を今、
撮り、定期的に小品を出す、それは少なくとも私のためにする行為として、
小品をこしらえることを始めよう、まさしく始める時なのだと思いに至る。
そういう一週間。写真は江ノ島で買ってきた貝殻と、宗左近の詩集とお気に入りのマフラー。
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浜辺に行って来た。
そこに浜辺があるという理由だけで裸足になった。
今まで幾度となく裸足で歩いた浜辺について、思い出した。
一人でしかないと同時に、もう一人ではない。
内包する脆弱性を一つ一つ、形にしていく人生なのだ、と。
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あいこぱ。フランス文学研究から大いなる逃亡後、あっちへふらふらこっちへふらふら。愛読書はブランショ、百閒、ヴォネガット。写真、 コラージュもやります。連絡はmail:aikopa@gmail.comまでお願いいたします。

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