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気づいたら、5月も後半になっていた。何たること!
震災前から見続けていたジョナス・メカスのWaldenがようやく見終わる。
映像を詩として成立させる。そういう試みのように感じられた。
ぶれる画像、街を行き交う人々の早回し、
ぷちっぷちっと途切れる映像の合間に、
郷愁がにじむ。
この3時間にも及ぶ映画の6パートを3ヶ月かけて見ているうちに、
私は筒井武文の映画を見た。
気まずい沈黙を量産する彼のトークショーで、
初めはコメディを撮ろうと思うのに、出来上がるとあんまり笑えないんですよね。
と言っていたのが印象的だった。
大衆的なコメディに陥らずに、ノーブルな雰囲気を保ち続けるのか。
アッバスだって、崇高なユーモアをもって、カメラを回し続けたではないか。
スウェーデンのロイ・アンダーソンみたいに、筒井武文が年をもっと重ね、
また再びモノクロのシネスコープ映画を撮ったら、それがたぶん、
彼の最高傑作になるに違いないと思う。
人物描写はもういいから、存分に彼の映像哲学をまっとうするような、
あっと、うならせるような映画を見たい。
写真は先々週、米子に行った時に泊まったホテルから。
こういう比率に写真を編集してしまうのも、シネスコの影響なのか。

スカッとした写真

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先週の日曜は選挙に行った後、久しぶりにカメラを片手に一人、散歩する。
カメラをぶら下げて、ただ追い求める風景を探すのは、
一人、自分と対峙する行為であり、
レンズの奥から、その風景を掴み取るような勢いで、
撮らなければ、やはり良い写真は撮れない。
その気持ちに迷いがあると、結局、写真に出てしまう。
意気込んで、逆に良くならないこともあるけれど、
その風景に出会うまでの助走もまた、必要なのだと思い、
とにかく、シャッターを切る。
上の写真は、撮った時、スカッとした。
今週に入って、スパイシーな料理が食べたくなり、
何やら、黄色い料理ばかりを作っていた。
そして、ここ一ヶ月、スリーマイル島の映像を繰り返し見るうちに、
無意識下でくすぶっていた何かが急浮上。
突然、タジン鍋が欲しくなる。
白、ではなくては、ダメだ。
できれば、複数、並んでいる必要がある。
ミクロなスリーマイルの中で、スパイシーな料理が、
沸々と白煙を上げ、美味しい時間を作るのだと妄想が広がる。

完全に初見だと思い込み、借りて来た「マーゴット・ウェディング」。
妹の結婚を阻止しようとする姉と、
それから解放されようとする妹、
切り倒される思い出の木と、
離れ離れになりそうになった息子の乗るバスを全速力で追いかける。
前に見た時よりもずっと、素敵な映画だったように思う。
ホフマンの「卒業」と抱き合わせで、見たい一品。

そして、私はまた、詩について考えていた。
大いなる休止の後に、よどみなく何かが語られ出す予兆。
いや、それは果たして詩という形態を保持していられるのか。

赤セロファンの不在

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地震後、色々なものが店先から忽然と消失したので、
私はそれがなくなっているということに、気づかずにいた。
それは必ず、文房具屋という看板が書かれた店でなくとも、
文房具を扱う場所においては、たとえ見えにくい隅に追いやられているとしても、
ぽっと置かれているのをしばしば見ていたように思う。
おそらく、私が以前、赤セロファンを購入したと覚えている時には、
多くの子供がそれを切ったり貼ったりなどして、
遊んでいたのかもしれないのだ。
今や、大人すら赤セロファンに対して郷愁を感じさえしない。
のではないか。と思うほど、赤セロファンの不在に、私はくらくらした。
写真は、モノクロの時代の到来を感じさせる一枚。
半ば切れかけたアーチの下で記念撮影をする私。
それでも、私は忘れないうちに、記しておかなければならないと思うものの、
何を記録したいかと自問自答しても、それは今ではないという気持ちが
あったのか何も書けずにいた。
そして、何も書かずにいる状態に身を任せなければならない立場でも
あったのだと思う。
地震の前後のことをひとまず記す。
地震前は、筒井武文祭りだった。厳密には祭りと題されたものではないけれど、
私の中でコトンと来たものがあったらしく、ほぼ祭りだった。
アテネフランセの文化センターに足繁く通い、さほど面白い展開を見せる
わけでもないトークショーを聞いて、腹を空かせて帰ってくるという日々だった。
ホームページに記されていた作品解説の文章に惹きつけられ、
実際の映画もまた、その文章同様に圧倒させる情熱が湧き出ていて、
これが「映画史を逆側へと突き抜ける」ということなのか。と納得したのだった。

地震後、日も経たぬうちに大阪行きが決まり、
大阪へ行ってきた。合間を縫って、憧れの古墳を見に行き、
古墳は地上から見ると、丘くらいでしかないのだということを
気づいたあたりで、古墳めぐりを中断。大阪万博記念公園へと北上する。
闇雲に太陽の塔を目指し、小踊りする気持ちを抑えつつ、
私がiPhoneへ収めた写真群。

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最後のお土産屋さんの前にあった、
「ぼくは売り切れました。」「ぼくも。」
「僕達はいっぱい売ってます。」という立て看板にキュンと来る。
確かにお店には小さな太陽の塔がいっぱい売られていた。
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あいこぱ。フランス文学研究から大いなる逃亡後、あっちへふらふらこっちへふらふら。愛読書はブランショ、百閒、ヴォネガット。写真、 コラージュもやります。連絡はmail:aikopa@gmail.comまでお願いいたします。

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