May 25, 2006

寿司が並べられていた後のアリクイ

「召し上がれ」とおじいさんは言う。
アリクイは両手を合わせてイタダキマスをして
食べ始めた。
寿司が口の中でとろけ、宇宙遊泳をした後、喉の奥の方へと
踊り歩いていく。おいしさのあまり、鼻から息をふうと吐いた。
「どうだい?おいしいかな?うちで働いてみんしゃい。
白いの。」
とおじいさんは言う。
こうして、そんなわけで、アリクイは
くんぱちさんの寿司屋で働くことになったのだった。

初めの頃は、アリクイは何をやっても駄目だった。
床のモップがけをしているうちに、モップと椅子の間に入り込んで
抜けなくなってしまったし、皿洗いも腕が短いためにモタモタして
しまうのだった。
そんなアリクイがモタモタしているところへ、くんぱちさんが何やら
鼻歌をふふんと歌いながら入ってきて、いきなり
「月ではね、時が六分の一の速さで過ぎ去るんだそうだよ、
白いの。知ってたかの?ほいほい」
と、おじいさんは笑いながら言った。
アリクイはそうなのかなぁと思いながら、
くんぱちさんが月面で握る寿司たちが宙をゆっくりと舞い、
くるくると落ちてくるのをぼんやりと想像していた。
いつの間にか、皿を拭く手が六分の一の速さになっていた。

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最近の私は、Hzだのkwだの、隠語を作って楽しんでいたが、
その隠語が示す意味が分からなくなって、角ちゃんに
Hzって何?と聞かれてしまった。隠語の意味がない。
あと、試験と試験の合間でやる気が吸い取られた私は、
ジャームッシュのブロークン・フラワーズを見に行った。
ピンクの記号とどうにもならないビル・マーレーの生え際が、
まさにこの映画を象徴しているのかもしれない。
ユーモアが湯気にかき消されてからからと回り、
ただ哀しいのだけれど、その実感はない。
そんなロードムービーだったと思う。
勉強をするべきなのだろうけど、自習型にシフトしてから、
休憩と称してアリクイの話を書いてると、そればかりが
むくむくと膨らんでいく。

投稿者 aikopa : May 25, 2006 8:14 PM