May 26, 2006

ミッチャンがくんぱちさんの店に来る

ミッチャンがくんぱちさんの店に初めて現れたのは、
まだサクラが咲いてなくて朝晩はよく冷えた時期だった。
ミッチャンが仕事の帰り、自宅へと向かう通りを歩いていると、
その前を紺色のはっぴを着たアリクイがてってってと歩いているのだった。
後をつけたというわけではないのだけれど、アリクイの歩幅が
小さいものだから、ミッチャンが急がなくても差がだんだんと
縮まっていった。何だか面白くなって、アリクイを見ていると、
その先にほんのりと明かりが竹やぶの間から見えた。
その中へアリクイがてってってと入っていくものだから、
竹やぶの間からそっと中を覗くと、アリクイが寿司を握っている。
ミッチャンはたまらなくなって、寿司屋くんぱちののれんをくぐった。

店内に人はまばらで、あちこちでひそひそと静かに寿司を食べていた。
ゆるりと昭和歌謡が流れていた気もするし、ジャズが天井や壁に向かって
はねたり飛んだりしている気もしたし、あるいは何の音もなかったかもしれない。
ざらざらとした壁にメニューを書いた板が等間隔に吊るされていた。
吊 吊 吊 吊 吊 吊 吊
マグロ、鯛、カツオ、イカ、タコ、甘えび、イクラ、
アナゴ、ホタテ、ウニ、中トロ、アワビときて、
あれ?と思った。
アボガドロ定数巻、盛り合わせハムレット、
短いものも巻かれろ、チャチャチャ茶漬け、
大いなる白の逃走劇・・・
さっきまでミッチャンの前方をてってってと小走りで
入っていったアリクイが、お茶の湯呑みを差し出した。
湯気の間から映り込んだ緑色のアリクイが見える。
ミッチャンが目を上げると、正確な遠近法の白いアリクイがいて、
彼女から何か言い出すのを待っているようだった。

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ずいぶんテクストがたまってしまったので、連日更新する
ことになってしまった。勉強シテルノカ疑惑。
今日の私というか、最近の私は自分の年も数えられない。
厳密には年齢というものに対して注意を払ってないのだと思う。
シビラの服をいつも着ているミワコさんに、ナントカっていう曲は
昭和ウンタラ年の曲なのよ、あなた、まだ生まれてないでしょう?
と言われたのだけれど、ギリギリ生まれてませんね〜、いやでも、
生命は宿っているかもと適当なことを言ってしまった。
よくよく考えてみると、姉の生まれた年じゃないか。
生命が宿っているのかもしれなかったのは姉だということに
気づいたら、とうとう私は数えられなくなってきた。と思った。
私はギリギリどころか、全然生命のかけらすらない。
そんな私がスターバックスでアリクイの話を書いていたら、
隣の女性がもう私、読まないからあげますと言って、
週刊誌をくれた。
よく分からないが、最近は気安く人に話しかけられる。

投稿者 aikopa : May 26, 2006 8:13 PM