September 27, 2007

再入場できる人生、コーヒーコーヒーコーヒー

coffee301.JPG

わたしはこの不在の間、ただ単に見知らぬ虫を素手で殺せるように
なっただけでなく、再入場できないはずの美術館で再入場したり、
カフェで長居した挙げ句、支払いをし忘れそうになったり、
しまいには穴の存在をすっかり忘れて、落ちてしまうという異例の
数々を成し遂げる。

帰りのバスで聞かせてもらった久保田利伸が笑いを誘い、
様々な薄暗い夕べの記憶を呼び覚まし、へぐぅとなったあたりで、
隣を見ると、角ちゃんがうつらうつらと窓に頭を打ちつけていた。
久保田利伸と中島みゆきの世界が回り、カリンバを持ち運ぶことに
よって剥された携帯の液晶シール。そして、焼酎はストレートで
飲むのが一番おいしいのだということに気づいたこともかなり
素敵だった。
片言のデタラメ英語をふざけ合いながら始めたものの、結果的に
英会話が上達したのではないかと思う。
その傍らで、わたしは人生も同様に再入場できるのではないか。
そう思えてきたのだった。

再読しつつあるブランショ、最後の人。
4年前くらいに読んだ時は、はじき返される淡い思いの
はかなく美しい恋が描かれていることも分からず、おそらく
あらすじさえも分からない状態で、その分からない状態を
わたしは面白いと思っていたのはすごいと今更ながら思う。
何が何だか分からない、その分からなさが面白かったのだ。
今、色々あらすじとか分かって、あらためて面白いと思うけれど、
ブランショもまた、きっと分からないと思いがちな人で、
厳密に分類できない感情の前でただ、どうしようもなく立ち尽くす。

写真は、喫茶店のシャッター。コーヒーコーヒーコーヒーと
書かれている。

投稿者 aikopa : September 27, 2007 11:26 PM