May 15, 2006

またアリクイの話。

会社へ行くと、「アリクイを雇った覚えはない」と言われて、
解雇された。アリクイになってしまった以外、
何も変わったところはないと言っても良かった。
それなのに、同僚だった人々が彼の容姿をちらっと見ては、
にやにやしていた。いつもは話すこともないような女の子も
気軽に彼の身体を撫でた。
何だか本当にアリクイになってしまったような気持ちになった。
どうすることもできないので、机の引き出しのものなどを
ごちゃごちゃと詰めたダンボールを持って、帰ることにした。
仲の良かった同僚が「何とかなるよ」とポンと背中を叩いてくれた。
帰り道、ダンボールの中がカラカラと寂しそうな音を立てていた。

次の仕事は次々と決まった。アリクイだからという理由で決まるものの、
結局一日やそこら働くと、アリクイだからという理由でクビにされた。
ただ、アリクイになった分、色々な人が彼のことを心配してくれたのかもしれない。
近所のスーパーのおばさんまでもが、「アリクイさん、大丈夫?
最近、ちょっと顔色悪いけど?」と声をかけてくれた。
実際、その頃の彼はすさんでいた。まるで萎びたスルメのようだった。
積み重なる人間不信や、どうにも説明できない身体性、外と内との問題が
一気に山積みになって、ひとつの丘を形成し、彼をほったらかしにしたまま、
ナンチャッテ戦国時代を繰り広げていた。
彼はその丘の上で、来る日も来る日も夕方を過ごしていたのだった。

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最近のトピック。
今、政治経済が眠い。
テキストを開いて、先生を見た途端、
眠くなる。世界がゆるりと眠い。
授業の後、とても脳みそが冴えているような気がするのは、
気のせいだろうか。
冷蔵庫にバナナを入れていたら、色が変わった上に、
野菜のように硬くなった。
おねいちゃんからいただいたロールケーキに二日でカビが生えた。
そして、なかなか本屋にたどり着けない。駅前の本屋レベルでは、
今読みたい本がないらしく、ダメなのだった。
仕方がないので、種村さんの編纂した東京百話を読んでいる。
これはこれで、こんな状況でもない限り、読まないかもしれない。

投稿者 aikopa : May 15, 2006 10:48 PM