June 30, 2006

フィブリノーゲン後

ビュビュンと風を切る。ミッチャンは走っていた。
厳密にはそのスピードが一番心地良い移動スピードだったのだと思う。
くんぱちさんの店が見える通りに出ると、ミッチャンの足は止まって、
また歩き出した。休みなのだ。竹やぶのあいだには、
どこまでも闇しかなかった。仕方なく帰ることにした。生暖かい夜。
道の桜が夜空に白く光っていた。
しばらくたって、そのちらほらと花開く桜の下を、
アリクイが「シャクラだ〜」と、ひょこひょこ踊り帰った。
きんぱちさんはまだくるくると焼き鳥を焼いていた。

何日か後、あるいはそれかける7。
寝具売り場のミッチャン。何も買う予定はないのだけれど、
ついつい来てしまうのだった。あいだというあいだに手を
差し入れていた。めくるめくあいだが織りなすはざま。
パイル生地のタオルケット、もったりと垂れ下がる毛布、
整列された低反発枕、そのあいだから、白い
ふさふさとした手触りの、ぐわしゅとつかんで、しゅぱっと
放す。何だろう。これ。とミッチャンは思った。
むぐっと動いて、くりくりとした目がこちらを見ていた。
今まで見てきた目という目と片っ端から照合しているうちに、
向こうが恥ずかしそうに笑ったような気がした。
「お寿司屋さんのところのアリクイ・・・?」とミッチャンの脳の声が
心地良い周波数を取り戻して、口から出てきた。
「ハイ。そうなんです。」
何で寝具売り場で毛布に挟まれているのかを始め、80項目にも
及ぶ疑問の?の渦に巻き込まれた。
ミッチャンがもごもごしていると、アリクイはしーと人差し指を立てて、
もぞもぞと這い出してきた。さっきまでくるまれていた毛布を折り目正しく
畳んでいる。
「寂しくなると、たまにここに来て挟まれているんです。」と言う。
水平線上に青と白のストライプが折り重なっているTシャツを着ていた。
少しゼブラ気取り?
「あの、このことは、内緒にしてくれませんか?」とアリクイ。
うんうんとうなずくミッチャン。
「また今度」と言って別れた。

: : : :

今週は毎日のように映画を見ていた。
そして、CDなどを買った。
朝、ヨンナムさん?の話を聞きながら、
何だかそういう小説は読んでみたいと思う。
目が覚めると海の真ん中。助けられて港に着くと、知らないところ。
なぜだか特別待遇で、日々を過ごしていたら、
親と再会。でも、きっと何にも感じない日々。
で、きっと足からは貝割れ大根が生えている。
あるいは、段ボールの中から見える偏狭の世界。

投稿者 aikopa : June 30, 2006 2:53 PM