July 14, 2006

サンバが打ち寄せてきて

linas060713.jpg

けれど打ち寄せてきたのはサンバのリズムだけではなかった。
くんぱちさんの兄弟のかんぱちさん、きんぱちさん、けんぱちさん、
こんぱちさんがやって来たのだ。今日はどうやら、けんぱちさんの
誕生日らしい。皆ドヤドヤとやって来て、奥の方に行ったかと思うと、
紺色のはっぴに着替えて戻ってきた。
だめだ〜。うりふたつ。とミッチャンは思った。
いや、うりいつつかな?
そんなミッチャンの隣で、雑巾を片手にアリクイは、
うわ〜、くんぱちさんがいっぱい、いっぱいいる〜、
ひゅ〜ばたん。倒れ込んだアリクイをめくるめく、
くんぱちさんたちが見つめる。
そしてその円の終わりと始めを示すようにミッチャンが
覗き込んでいた。
後からやって来た本当のくんぱちさんがくんぱちさんたちを
かき分けて、円の中心に入る。
「おい、白いの、大丈夫かの?」
くんぱちさんは、ゆさゆさとアリクイの身体を揺さぶった。
みょーんと伸びた鼻が、口が、ガクガクと上下した。
その揺れに連動して、ん、あ、あ、という声が
あさっての方向に散らばった。
「白いの、どうした?大丈夫かの?」
ぱちくりとまばたきをして、何とか世界の分裂を止めようと
思ったアリクイは、「くんぱちさん?」と言うのが精一杯だった。
「白いの、前に話したじゃろ。五つ子の兄弟のかんぱち、
きんぱち、けんぱち、こんぱちだよ。今日は、つまり、その、
私たち皆の誕生日なんじゃの。毎年、うちで会を開いて・・・、
もう何年くらいか・・・、うーん。」とくんぱちさんは考え込んだ。
すると、くんぱちさんたちは、かわるがわる、口々に、
さあ分からんのう、どうじゃったか・・・、知らんぬ、忘れたと
言った。
「まぁ、とにかく、今日は特別な日なんだの。腕を振るって
ごちそうを作るぞい、白いの。」
と言って、くんぱちさんは厨房へとアリクイを引っ張っていった。
くんぱちさんたちは、店内いっぱいに紙テープを張りめぐらし、
ミラーボールをつけて、ジャングル・ミーツ・ディスコテックを
演出していた。
くんぱちさんはこの日のために特別のメニューを準備していた。
鳥とか、サイとかチーター、ゾウ、ウサギなどのかたちをかたどった
果物が入ったサファリ・ポンチ、ガジュマルの幹をくり抜いたところから
にんじんやセロリの野菜スティックがにょきにょき出ているのとか、
色とりどりの巻き寿司が天井に届くくらいまで積み上げられたのとか、
海藻のジャングルの中に赤や白の刺身で花びらが作られているのとか、
口の中で泡がぱちぱちとはじけるコカ寿司、ココナッツの殻に酒を入れて
乾杯した。北緯35℃の熱帯。上機嫌な夜。

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写真はリナスからの眺め。
最近はこんなことを考えていた。
人生の引退試合には、私も大いなる頭突きをかましたい。
けれど、サポートされなくなった人生に私たちは何の救いを
求めたら良いのだろうか。
などと時事問題のボキャブラリーを使って人生を語る方法を
考えていた。
携帯でぼやけた写真を撮り、電気屋さんでそういう写真が撮れる
カメラが欲しいと言ったのだけれど、どれもこれもぼやけていなくて、
むしろブレていた。最近はブレてない、そんなカメラが流行だ。
参ったな。一眼なんて買いたくない、重いし、気が重くなる。
写真好きの友人は、デジカメなら後でパソコンで処理するとか、
ホルガみたいなアナログなカメラが良いんじゃないと言ってくれたが、
あの手軽さの延長線上にいつもいたいと思ったのだった。

投稿者 aikopa : July 14, 2006 12:01 PM