July 21, 2006

くんぱちさんたちとミッチャンと上機嫌な夜

アリクイもまた上機嫌だった。管をくるくると巻いて、
アフロ状態だった。あちゃ、あちゃ、こてと踊る。
しまいには、ワン、ワンと相づちを打ち出した。
「酔っぱらってるでしょ?」とミッチャン。
「ワン、酔っぱらいましタ。」とアリクイ。
そんなやり取りが何度となくリフレインした後に、
ぱたと横になったアリクイはくかーくかーすうすうと眠りだした。
「ミッチャン、ミッチャン」とくんぱちさん。
「冷えちゃうから毛布かけてあげて」と、もも色の毛布を渡された。
毛布をかけると、アリクイの丸まった小さな背中が呼吸に合わせて
ふくらんだりしぼんだりした。何だかデジャブだった。
ミッチャンは、前にもこんなアリクイを見ていたような気がした。
知らないうちに頭をなでていた。毛づくろいされてるみたいに
気持ち良くなったアリクイは、こんな夢を見ていた。
ブルーハワイの色をした太平洋にぽっかりと浮かぶ島。
きらきらと光る白浜に透き通る波がふわふわと打ち寄せていた。
すると遠くの方にくんぱちさんがいた。夢の中のくんぱちさんは、
アロハ柄のはっぴを着て、みょーんと地平線上に横たわる長い
のり巻を持っていた。
「見てくれたかの〜?白いの〜。できたぞ〜。できたんじゃ〜。
のり巻太平洋横断じゃ〜。」
わぁ、すごいやとアリクイは思った。
さすがくんぱちさん。やることがパシフィック。
バシャバシャとアリクイが駆けていくと、くんぱちさんがにっと
笑った。後ろの方からウクレレを奏でるミッチャンの歌声が
聞こえたような気がした。
ボサノバ風にアレンジされたサンバだった。
目が覚めてみると、本当にミッチャンが歌っていた。かすかな声。
リズムに合わせて、アリクイの背中をぽんぽんと叩いていた。
アリクイはそのままもう一回、目をつぶった。
よく干された毛布の匂いがした。

: : : :

実家に戻った。
ぼやけた画像が撮れるデジカメを買った。
五時半に起きて、朝、友人に会いに行った。
私の目は血走っていた。本気の目はいつだって、眠そうで血走っている。
雨が降って、靴下が濡れた。かばんも濡れた。
アテネに行くと、京都の実家から帰ってきた友人が、
京都のアクセントが抜けずにいたのだけれど、
私はそれに気づくまでどうしちゃったんだろうとあれ?あれれと
思った。
何も。何もない。
少子化対策を考えるという宿題が出たので、あれこれと考えたけれど、
インドとかバングラデシュ?みたいな人口が爆発している国から
養子縁組をもらうとか、すべての娯楽を排除するとか、何だか突拍子もない
アイディアしか浮かばず、何だか悲しくなった。
おそらく私は少子化なんかどうでもいいと思っているのだ。と思った。
授業でジダンを許すか許さないかっていう議論の時も、もごもごと
どっちでもいいと言ってしまった。
私はこれからたくさんの時間を棒に振り、しかも野球のバットとかじゃなくて、
カブトムシに餌をあげるような割り箸の棒で、それで、
セーターの伸び縮みのことを気にし、蒸気をかけてパタパタやって
蒸気を抜くんだろうか。けれど蒸気は何のために?

投稿者 aikopa : July 21, 2006 7:52 PM