November 29, 2006

ジャームッシュと浮き輪、旅と旅のファービー特急で

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帰ってきた。
旅客のことをpassengerと言うけれど、まさにその通りだったと思う。
ただ通り過ぎる。ルーヴル美術館も、ただひたすら絵の前を通り過ぎた。
おそらくそのスピードで見るということは、私の中で過ぎる時間が逆に
減速するのではないか。明らかに脳みその処理スピードは各駅停車だった。
しかも、反対方向に走っていく。いや、走っていたのは脳みそじゃなくて、
列車だった。乗り間違えた。
全然知らない駅で一時間近く、ぼんやりしていた。
三文ミッシェルからの帰りのバスの中で、びゅんびゅんと過ぎ行く
車を見ながら、ぼんやりと考えていた。
おそらく旅は相対的にアイデンティティを剥奪する。
埋没する日常からの剥離、ちょうどレゴブロックの人がシルバニアファミリーの
中にぽっと入っちゃった感じ。マトリョーシカの中に一人だけファービー。
相対的違和感が目まぐるしい時間の流れを徐々に減速させる。
その感覚の始まりがおそらく旅行から旅への移行期間なんじゃないか。
と思ったけれど、結局よくわからなかった。
そんなことどうでもいいくらい私は、通り過ぎていた。ように思う。
そんな目の前を通り過ぎるパリの夜景を見ていたら、
ジャームッシュのナイト・オン・ザ・プラネットを見たい見たいと思った。
そう思っていたら、ジャームッシュが夢の中に出てきた。
40代の時の風貌で、撮影クルーと一緒に浮き輪に乗って、日本に
流れ着いたところだった。
浮き輪はないだろうと思ったけれど、よくよく考えてみると、
そうか、浮き輪か、ジャームッシュと浮き輪、その接点が見えるような、
見えないような、そんな気がした。ukiwaジャーニー!
確かその日は、隣でままこがぷうぷう言いながら、寝ていた。
みんな、疲れてるときはぷうぷう言うのだろうと思う。
おねいちゃんもぷうぷう言っていた。

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フランスでお店を去る時にさよなら(au revoir)と声をかけた後で、
ままこがボンボワール(bon voir)と言っていることに気づいた時は、
ああそうだ、教えるの忘れてた。と思った。
でも、bon voirでも意味は通じるんじゃないかとも思った。
個人的に、ちょっとbonjourと混ざってるところが好き。

写真は上段左からモナコ・モンテカルロ駅。
モンサンミッシェル。ツアーの人々。夕焼けと沼に溶け込む。
下段左から、エズの熱帯庭園のサボテン。
クレーン。ヴェルサイユに行く途中で見た。吊り下げられた日常のことを思う。

投稿者 aikopa : November 29, 2006 9:41 PM