December 11, 2007

具体的すぎると、おかしくなっちゃうんじゃないだろうか

大江健三郎の若い頃の短編集を読んでいる。
再び地に足がついたような感覚。
二十歳で、怒りを持続できるほど、自分は若くもなく、また
年老いてもいないというようなフレーズがあり、静かに共感を呼び寄せる。
やはり、青い背表紙とはわけが違うのだ。
心臓は飛び跳ねないし、どんな過酷な状況でも神経が慣れていく。
ただ、書き慣れていないと思われる戯曲は変だった。
(親切そうに)とか、事細かに記されている。そして、最後は(急激に幕)。
笑った。これには笑ってしまった。急激に幕はないだろう。
舞台袖で一生懸命、幕を引いている人がちらつく。
そして、ああー、わたしはこんなに偉大な作家の文章に対しても、
笑ってしまうようになってしまった。タイタニックで笑うのとはわけが違う。

昨夜、お風呂上りに居間に行くと、お母さんが笑い終わったところで、
え?何、笑ってるの?ねぇ。と聞いたら、食品の表示を偽装していた
会社の人々が謝罪会見をして、「30秒以上、頭を上げませんでした。」
と言っていた。自体の深刻さはよく分かるのだが、ちょっとそれは笑いたくなる。
やっぱり、具体的すぎると、おかしくなっちゃうんじゃないだろうか。

ジョナタンから送られてきた作文の宿題に、「五十五分後、イナルコまでとどきます。」
と書いてあった。笑った。
前半の厳密すぎる描写と、後半のメタファーが混ざり合って、
何とも言えない、ユーモアを生み出す。

投稿者 aikopa : December 11, 2007 7:50 PM