April 28, 2008

腹話術師、分けもわからずラテン語で悪態をつく

一種の完全な腹話術師であるぼくが声を張りあげると、
いたるところすべて、そこはぼくの存在しない場所となり、
さらにはぼくのあらゆる部分が沈黙に匹敵するような
場所とさえなった。

と『謎の男トマ』でブランショが書いている。
腹話術師という形容がそれ以降の文章を一味違うものにし、
厳密にその情景を思い描こうとするだけで、ぷっと
笑いが込み上げる。いつから、腹話術師になったのだ。

明け方、夢の中で叫び声をあげて、目が覚めて、
どうも寝付けないので、本を読む。
カーテンを半分だけ開けて、窓のそばの床に座って、
外の光だけで本を読む。
久しく忘れていた感覚。
やわらかな光と腕に負担をかける姿勢。
そもそも文学全集の一つであるから、重くそして
大きいのだけれど、そんな不便さの中で読むブランショは
実に格別だと思う。

最近はというと、もう本当にいかにして脳みそを働かせないかに
心身をそそぎ、私はラテン語を始めました。
全然わからないけれど、ラテン語のスキットが変。
現代じゃありえないというディティールに感嘆し、眺めていたら、
いつの間にか覚えてきた。サルウェー。
遅々として読む。隅々のディティールを愛すること。
夢は何百年も前に死語となった言葉で悪態をつく。

投稿者 aikopa : April 28, 2008 12:05 PM