July 5, 2004

「いずらの踊り子」 川端成康成著

ちゃんちゃかちゃかちゃか ちゃんちゃかちゃかちゃか
遠くの方で、音がする。
長い夕べをみんな、楽しんでいるのだ。
私はうとうととしながら、ふと思った。
ちゃんちゃかちゃかちゃかに吊られて、
廊下を歩いていくと、薄明かりの障子の向こうで、
ちゃんちゃかに合わせて、くねくねとペンギンのように
踊る影や、くねくねと猿が顔をなでるように踊る影があった。
儚げな夜の闇を、困惑させるようなコントラストが、
のたうち回っていた。
なんだ、これは!?
ちゃんちゃかちゃかちゃか ちゃんちゃかちゃかちゃか
すると障子の戸がすっと開き、若い踊り子が出てきた。
そうだ、私は旅の途中で踊り子の集団に会ったのだった。
私は自分が歪んでいるとか、凹んでいるとか、
角張っているとか、そういうこととは関係なしに、
旅に出ることで、この現実の延長線上の世界へ行けるのではないか。
そう思ったのだった。
いや、悩んでいるということが、どの峠にも付きものかもしれないが、
では何を持って、悩むと言えるのか。
どこからが悩むと認められるものなのか。
私は、うんうんうんと考えていたのだった。
そこで出会ったのが、この踊り子たちであり、
行く方向も同じだからと、同じ宿に泊まることになったのだった。
すっかり忘れていた。
くねくねとちゃんちゃかちゃかちゃかは、延長線上に見える、
やたらに眩しい北極星のようだった。
ちゃんちゃかちゃかちゃか ちゃんちゃかちゃかちゃか

++ + +  +   +
家族で五浦(いづら)の温泉に行ってきました。
北茨城は涼しくて、露天風呂はちと寒かったです。
海が綺麗で、たくさんの打ち寄せる波でした。

投稿者 aikopa : July 5, 2004 4:48 PM